2002年10月08日

_ [diary] 企業説明会

午後からフォーラム8で企業説明会。突然前で挨拶させられて困りました……。挨拶だけならいいんですが、その後の段取りが分からなかったため、どこまでしゃべっていいものかと悩んだあげく、無難な挨拶で終わらせたのですが、あとで説明がなかったのならステージについてもう少しつっこんで話をしておくべきでした。ちょっと失敗です。まぁ、アンケートは無事に採れたのでよしとしましょう。

帰りがけに部署の一部の面々で晩ご飯を食べました。7時前にべろんべろんになっている皆さん……。僕は寝不足でしたしノンアルコールでしたが、周りに釣られて酔っているような気分になってしまいました(^^;

_ [misc] ファン活動と著作権

自分でファンサイトを作って小説を載せたいという方から、著作権や肖像権の違反なのか、作者にロイヤリティを支払わないといけないのか、という質問メールが来たので返事を書いてみました。かなりの長文を折角書いたのでこっちにも転載しておきます。以下引用。

_ 以下は、僕の個人的な見解と言うことで説明させていただきます。あくまで、僕が理解している範囲で、ということですので、細かいところに間違いがあるかもしれません。最終的には、ご自分で調べたものを信じてくださいませ。

まず、「肖像権」ですが、現在の通例の運用では肖像権は実在の人物の写真などでしか発生しません。そもそもプライバシー保護の観点からの権利ですので架空のキャラクターの場合は対象外です。また、財産権であるパブリシティー権(出版する権利)という観点から馬やキャラクターなどにも適用範囲を広げようという動きもあるようですが、特に小説業界で登場キャラに肖像権を、という動きがあるという話は僕は耳にしたことがありません。ゲーム業界にせよ、アニメ業界にせよ、財産権の保護は次に説明する著作権法でカバーするという動きの方が自然です。

続きまして、「著作権」についてです。軽くざっとまとめてみます。

まず、著作権を大きく分けると「著作人格権」と「著作財産権」に分かれます。

人格権というのは、作者が自分の作品を貶められることによって精神的なダメージを受けることがないように定められた権利です。これは作者が誰かに譲ったりすることはできません。

財産権というのは、作品から得られるはずであった利益を守るための権利です。こちらの方は、作者が出版社に一部だけ譲渡していたりします。財産権の中に、翻案権と二次著作物利用権というものがあります。物語の内容を変更したり、物語の内容を元にした別の作品をコントロールする権利です。また、複製権と呼ばれる作品を複製する権利もあります。これにはキャラクターのイラストなどをコピーして使用する権利も含まれます。

さて、ファン活動で小説を書いた場合に、どの権利を侵害する可能性があるのかを考えてみます。

まず、作者の愛するキャラクターを使い、作者の意に大いに反する物語を書き、原作に対する多大なる誤解を世間に与えた場合です。この場合は、人格権のうちの同一性保持権というものに抵触します。

これに関しては、過去に「ときめきメモリアル」というゲームをモチーフにしたアダルトアニメの製作者に対してコナミが裁判を起こした事件があり、キャラクターのイメージに対する同一性保持権の侵害が認められてコナミが勝訴しています。

http://www.phase-d.com/column/c009.html

また、そもそも原作がある作品は全て二次著作物ですから、私的利用以外の目的で作成すると財産権のうちの翻案権の侵害、それを公表したり販売したりすると同じく二次著作物利用権の侵害にあたります。ちなみに、紹介文などについても、感想だけなら大丈夫なのですが、あらすじを書いてしまうとやはり翻案権の侵害になるという説があるようです。

それから、小説の場合はあまり問題がありませんが、漫画などのイラストの場合は、キャラクターをコピーしたということで複製権の侵害として提訴されるケースはあります。いわゆる海賊版のキャラクターグッズなどもこちらですね。

昔、ポケモンの成人用同人誌を描いていた方が任天堂から提訴されるという事件がありましたが、その時には複製権の侵害という訴状だったはずです。もっとも、任天堂の心としては同一性保持権が主眼だったようですが。

さて、ファン活動にまつわる権利をみてきたところで、では実際に私たちは裁判に巻き込まれてしまうのでしょうか。

答えは、限りなくNO、です。少なくとも、前触れもなく訴状が送られてくるということはないでしょう。

まず、著作権のうち、上で上げたものは全て親告罪です。すなわち、権利者が申し出ない限りは罪になりません。

それだけでは心が晴れないという場合は、次のような理屈を考えてみましょう。

1.著作人格権の侵害について

原作者が喜んでいてくれる限りは侵害ではありません。もしも、原作者の公式ページがあって、ファンサイトへのリンクがあるのなら登録してもらいましょう。無かったら、こんなページを作ってみました、と作者にファンレターを送ってみましょう。お忙しいでしょうし、返事は期待してはいけませんが、少なくとも怒りのメールがこなければ「ダメって言う訳じゃないんだ」と自分は精神的に安心できます。もっとも、相手が黙っているからって調子に乗ってなんでもやっていいというわけではもちろんありませんが。相手にするのが面倒なだけで放置されている可能性も高いですし(^^;

2.著作財産権の侵害について

常識的に考えて、ファン活動は宣伝効果で利益を与えこそすれ、著作権者の利益を侵害することはないはずです。……そう信じましょう。同人誌を数千部単位で通信販売とかし始めるとまた話は別ですが(笑)

2については、少なくとも著作権侵害の訴状が来る前に一部の著作権を保持している出版社側から事前に警告が来るはずです。

警告といえば、講談社が自社ホームページに警告を出したということで

一時ファンサイトが騒然としたことがありました。

http://www.bookclub.kodansha.co.jp/copyright/

ここが問題のページです。実は、書かれている内容をよくよく見てみると一部の著作財産権を譲り受けているだけのはずの出版社が主張できるもの以上の権利を主張しているように見えます(^^;ただ、著作権者側が同人漫画・同人小説を含め明示的に禁止する意図があることは明らかですので、多くのファンサイトが縮小・閉鎖していきました。

しかし、このような告知をしている講談社も、実際の運用としては

http://www.bg.wakwak.com/~kotetsu/tansaku/chosaku.html

に書かれているように、かなり弾力的な対応をしているようです。権利者としては、悪質なケースへの対処のためにきつめに制限をかけます。よって、二次著作物を表だって認めるわけにはいかないのですが、実際には黙認という形で動いていることが分かるかと思います。

さて、最後になりましたが、質問への回答を。自分でファン小説を書きたい場合ですが、特に何もする必要はありません。ただ、作者の方へのファンレターと一緒に報告でも送っておくともしかしたら喜んで読んでくださるかもしれません。しかし、くれぐれも、許可は求めないようにしましょう。明確に「はい」とは言えない場合が圧倒的に多いのです。黙認してくれたらそれに甘える。ダメといわれたらあきらめる、がネット上でのファン活動の基本姿勢ではないかと思います。また、最低限、原作者の名前と元になった作品名は書きましょう。これは著作人格権云々以前に、当たり前の礼儀ですね(^^;

最後におまけとして法解釈を一つ。とある弁護士さんの見解では、人名には著作権は発生しないので、同じキャラクターを使った全然違う筋の小説であれば、たまたま登場人物が同じ名前の別の作品ということで著作権侵害が発生しないのではないか、とのことです。もちろん、判例に依って裏付けられているわけではないですが、こんな考え方もあるのだ、という参考として。

コミックやイラストに関しては、複製権の判例がすでにしっかりしているので絵が似ているだけでNGになる可能性が高いですから、同じように、「別人」で切り抜けるわけにはいかないようですが……。